iSCSIとは
iSCSIは、SCSI(Small Computer System Interface)プロトコルを標準的なTCP/IPネットワーク上で動作させるための技術標準のことであり、既存のイーサネットインフラストラクチャを利用して、ブロックレベルのストレージアクセスを可能にし、SAN(Storage Area Network)を低コストで構築するためのプロトコルのことです。
iSCSIの概要とストレージ接続における役割
iSCSI(Internet Small Computer System Interface)は、ネットワーク接続型ストレージの分野において、ファイバーチャネル(FC) SANの代替技術として広く採用されています。従来のFC-SANが専用のFCアダプタやスイッチ、ケーブルを必要とするのに対し、iSCSIは既に普及しているギガビットイーサネット以上の標準的なネットワーク機器をそのまま利用できるため、導入コストと複雑さを大幅に削減できます。
iSCSIは、サーバーがストレージと通信するための SCSI コマンドを、IPパケットにカプセル化(格納)して転送します。これにより、サーバーはネットワーク上のリモートにあるストレージを、あたかもローカルに接続されたディスクのように認識し、ブロック単位でデータを読み書きできます。
主な目的は、サーバーとストレージ間の高速かつ効率的なブロックレベルのデータ転送を、既存のTCP/IPネットワーク上で実現し、エンタープライズレベルのストレージ統合を民主化することです。
iSCSIの技術的仕組みと構成要素
iSCSI環境は、主にイニシエータ、ターゲット、およびIPネットワークの3つの要素で構成されます。
1. イニシエータ(Initiator)
- 役割: ホストサーバー側に位置し、SCSIコマンドを作成し、それをiSCSIパケットにカプセル化してターゲットに送信するソフトウェアまたはハードウェア(HBA)です。
- 種類:
- ソフトウェアイニシエータ: OSに標準で組み込まれたり、ソフトウェアとしてインストールされたりします。CPUリソースを使ってiSCSIパケットの処理を行います。
- ハードウェアイニシエータ(iSCSI HBA): 専用のネットワークアダプタカード(HBA)がiSCSIの処理をオフロード(代行)するため、ホストサーバーのCPU負荷を軽減し、高いパフォーマンスを実現します。
2. ターゲット(Target)
- 役割: ストレージアレイやNASデバイス側に位置し、イニシエータから受信したiSCSIパケットをSCSIコマンドに戻し、ストレージ(LUN)への読み書きを実行するコンポーネントです。
- LUNの提供: ターゲットは、物理ディスクを抽象化したLUN(Logical Unit Number)をイニシエータに提供します。
3. 通信プロトコル
iSCSIはTCP/IP上で動作し、通常はTCPポート860番または3260番を使用します。SCSIコマンドとデータは、このTCPセッション内で双方向でやり取りされます。
iSCSIの利点と導入における考慮点
利点
- コスト効率: 専用のファイバーチャネルインフラストラクチャ(高価なFCスイッチやHBA)が不要であり、既存のイーサネット機器を流用できるため、SAN構築のコストを大幅に削減できます。
- 柔軟性と管理の容易さ: 既存のIPネットワーク管理の知識やツールをそのまま活かせるため、導入・運用管理の学習コストが低く抑えられます。
- 長距離通信: TCP/IPベースであるため、ルーティングされたネットワーク上であれば、地理的に離れた場所にあるストレージとの接続も可能です(WAN越し)。
考慮点
- 性能: 標準のイーサネットはFCと比較してパケットロスやジッター(遅延のばらつき)が発生しやすく、特に混雑したネットワークではパフォーマンスが低下する可能性があります。
- ジャンボフレーム: 効率的なデータ転送とCPU負荷軽減のため、通常よりも大きなデータフレーム(ジャンボフレーム)の設定が推奨されます。
- ネットワーク分離: 高い信頼性と安定したパフォーマンスを確保するため、iSCSIトラフィックを他の一般通信(Webアクセスなど)と分離した専用のVLANや物理ネットワークで運用することが一般的です。
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